夜中にはしごで避難した話

2020年
※少しばかり前の話※

 

「空気が汚れています」「空気が汚れて危険です 窓を開けて換気してください」

ある夜、何かしらの警報音と突然の声で目が覚めるわたくし。

空気が汚れていると言っている。視線の先の天井にある火災報知器から声が出ているのはわかった。

空気が汚れているらしいので、まさかガス漏れか?と思った。

けれども私は基本的に何かしらを熱する時は低音調理器を利用する(高温加熱するようなものを作らない&食べないので)、コンロを使うことはほぼない。もちろん使用有無に限らず接続部とかかから漏れることなんかはあるだろうけど、と思いつつガスならヤバいわと思ってベッドから出る。

起き上がる際の部屋からキッチンまでの天井の景色と嗅覚で、煙が部屋に自室に入ってきているのがわかった。そして煙は玄関方面に行くほど濃くなっていることも。

この時点で玄関側で何かしらが起きたっぽいなと判断。この判断を「ガス漏れかな」の思考と並行して行っていたので、一旦煙の濃度が高い玄関のほうに向かってた。

引き返してベランダに行こうと思ったけれども、ベランダに出るにも靴が要るなと思い低姿勢で靴だけピックアップ。多分玄関側にくるのはこの時1回がラストチャンスっぽい気がしたので、もしベランダ側からの避難が困難か時間がかかる場合、とりあえず玄関からまだ逃げられたりしないかな…と思って一瞬ドアを開ける。

すると炎は見えないけど煙はかなりある様子。こいつはヤバい(咄嗟の口調)。

火災で亡くなる人の多くが一酸化炭素中毒だということはよく聞いて頭にあったので、こちら側に逃げるのがNGなことは本能的にわかった。瞬間的にドアを閉じる。

ドアの密閉度を保つために鍵をかけたいいのか、もしもの超急ぎのために鍵を開けておいた方がいいか迷ったけど、とりあえず鍵は開けたままにした。(結果的に開けてて良かった)

玄関がNGならベランダだなとなる。ベランダでもスニーカーは必要なので、低姿勢でスニーカーをピックアップしてベランダに向かった。どのタイミングかわからないけどスマホと煙対策用のタオルも無意識で持ってた。

この時点で自分が置かれている状況でわかっていることは「とりあえずどっかの火災の影響で私の部屋にも煙が来ている」「同じマンションか近隣の建物かは不明」の2つ。圧倒的情報不足。出火元がわかればだいぶ行動判断のクオリティが上がるのに…

その状態でベランダに出たら、想像以上に非常事態が出来上がってた。乗り遅れた気持ちになる。このとき深夜1時40分頃。

ベランダ側は住んでるマンションの駐車場と駐輪場スペースに面しているのだけど、既にたくさんの人が避難していた。マンション前の道路には消防車が来ている。映画か漫画家何かしらでありそうな、「ある日外に出たら世界が荒廃していた」みたいなやつの主人公側みたいな気持ち。既に出来上がってる世界に放り出された感じ?とりあえず私逃げ遅れたのか?

とりあえず住まいのマンションの他の部屋をなんとなく見たけど、ベランダに炎や煙が漏れている気配がないのでマンション側に出火は無さそうに見えた。あと、消防や警察の人と避難者と野次馬がみんなマンションの裏手(ベランダと逆側)のほうを見ていたので、玄関側のマンション以外の何かしらが燃えてるっぽい感じはする。

とはいえ出火元不明なのと、この部屋にいることが正解なのかの判断材料がなかったので、消防士さんに聞くことに。

夜に紺色の服着てるもんだから多分私のこと見えてないっぽいので、「ここにいて大丈夫ですか?」って大声で聞いた。あと出火元。

出火元はマンション裏側に隣接するお宅。そして避難については、部屋に煙が結構入ってきていることを伝えると、「今廊下側からの救助ができる状況か確認してるから、確認が出来次第 消防士が向かうから待っててください」とのこと。

上の階のベランダで待機してる居住者の方が、キツければマンション備え付けの避難はしご使った方がいいかも、大声でと教えてくれたけれど、とりあえず一旦待つことにした。下の階に目をやると避難はしごが使われた形跡がある部屋もあるので、それで避難した人もいたみたい。一方私の階より上の人はベランダに出てる人が多かったので、下の階の人が先に気付いて避難してたようだった。それはそうか。

煙を感じながら待ってるので、「いったいいつまでこの空気吸って大丈夫なんかな…」と考え出した頃に「今から消防士がそこに行きますね」とのこと。ベランダ側からはしごで上ってきて、私はそのはしごで避難するっぽい。急になんかすごい救出感出てきた。

はしごは消防の梯子車ではなくて、長い普通のハシゴを地面からベランダにかける形。消防士さんが一人ベランダまで上ってきてくれて、消防士さんの胸元に巻いたロープの先を私の胴体に巻き付けた命綱的な状態で、私一人が下りていくスタイル。

幸い高所恐怖症とかではないので、地上までそこそこの高さがあるけどハシゴを下りることは問題なかった。故に足元を見ながら下りるほうが下りやすかったんだけど、消防士さんが配慮して「下見ないで!大丈夫!」って言ってくれました。下、見させて…

無事に地上に下りて、避難している人の中に入っていく。どうやらほぼ鎮火に近い状態になっているようで、その様子を遠巻きに眺めていた。

待ちながら、「先程はしごで救助された方ですか?」と消防の人かな?警察の人かどちらか忘れたけど聞かれたので、名前と部屋番号などを教えた。

待ってる間に消防の方が飲み物を下さったりして、それを飲みつつただひたすら立って状況が収まるのを待つ。ふと、咄嗟に持ち出したものがスマホだったんだな…などと思い、生活基盤の大部分、ほぼ全てをスマホ1台に依存していることを再認識したりしながらぼーっとしてた。もはや通帳でも印鑑でもなく、スマホが大事だよね…

避難してからおそらく3〜40分くらい経って、もうお部屋に帰っても大丈夫です、とのこと。

ここで鍵を持って出てくるのを忘れたことに気付く。家の鍵は開けてきたけれども、住んでいるマンションはエントランスがオートロック+エレベーターも鍵がないと呼べない。エントランスは消火活動で常時開いてる状態だったけれども、エレベーターは乗れない。

そこで直接居住エリアに繋がっているゴミ捨て場の扉が消火活動用に開いていたので、そちらから入ろうとしたけれど消火の跡で廊下が泡だらけだったので通れないとのこと。

エレベーターで…と消防士の方に言われ、「鍵が無くて…」と言ったら「あ、エレベーターも鍵が必要なんですね…」となったところに、鍵を持って避難されてた居住者の方が一緒に乗せてくれて無事にお部屋に帰還。自宅ばかりは人の部屋の鍵では開けられないので、自分の家の鍵だけでも開けてて良かった。多分開けてなかったらまたはしごで帰宅になったものと思われる。

自宅に戻ったのが多分2時半〜3時頃。とりあえず寝られるだけ寝よ…と思ってベッドに入るも、やはり寝付けないので目を閉じてるだけになった。

あと、部屋の中はまだ煙の匂いが残っているのでベランダを開けたまま寝ていたので、外の消防の方や警察の方の声が聞こえていたので寝る環境でもなく。人の話し声をBGMにただ目を閉じてたみたいな感じだった。

そうしていると4時過ぎにインターホンが鳴り、消防の方が少しお話したいとのこと。エントランスに下り、「はしごで避難された方ですよね」を再び聞かれ、名前と火事に気付いた時間、その時の部屋の状況などをお話しした。ちなみに翌日(というか当日)の昼間も再度確認的な感じで同様の訪問があった。

そんなこんなで朝を迎え、平日だったので仕事を休むことも考えたけど、休むほどのことでもなく逆に覚醒しているので普通に仕事した方がいいな、と思って出勤した(この時は前職)。リモートだし。

一応朝の段階で火事があって避難云々を伝え、ほぼ1時間半くらいしか寝ていないので休憩しながらの仕事とさせて貰えるようにお願いをしたので仕事は辛くなかった。

ただ火事後2日間くらいは、ベッドに入る際に「あの日も同じようにベッドに入ったのに、いきなりあんなことになるんだなあ…」と思い出したりはした。当たり前の日常は貴重。

火事もそうだし、地震など防災対策は改めてきちんとすることと、災害、有事、さまざまなパターンの出来事に対する行動をあらかじめイメトレしておくの大事ですね!

 

今回の件でちゃんと調べたけど、火災報知器と言っても色々な種類があるんですね。

それまで火災報知器が発動することなんてそうそうないだろうな、という怠慢な心があったので、我が家が煙を感知するタイプのものだということも初めて知った。いい勉強になりました。

みなさんも自宅の火災報知器が何タイプなのか、どのレベルでどんな警報音が鳴るのかチェックしておくことをお勧めします。もしもの時の状況判断に非常に役に立つので。是非チェックしてください!

 

ではでは。

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